どこぞのドット打ちのWeb

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苦悶の文書
拝啓父上様。声を聞かせられないこと、残念に思います。
私が父上様へ謀反を企てたとして罪に問われ、この地へ飛ばされた衝撃は今でも忘れられません。
ええ、何と言ってもこの地では人の声が一切無いのですもの。
何でも、宗教上の理由だとか。今更父上様に言っても仕方のないことですが。
なので、他の地から訪れた客に対してのみ特例として口を開き、恥ずかしそうにその不明瞭な言葉を引き出せるのですが、
普段は手話や筆記でのやり取りが主立っています。
私も手話は随分慣れたものです。しかし、
人の声がしないことの違和感、孤独でしょうか?それには未だ慣れません。
もう私自身の声すら思い出せぬほどです。
ええ、法律で禁ぜられておりますもの。
この法律というものの重大さを私は見誤っていました。
私はこの地に来て、一週間もせぬ内に、自宅で、コップを落とした時に小さく声を出してしまいました。
たったそれだけです。
この地では声が大層遠くまで聞こえるようで、それが密告されてしまいました。
次の日の朝。私の元へ異端審問官の方がやってまいりました。
何が何やら分からぬ私は、手を後ろに縛られ、裁判所へ連れられ、怯えながら裁判が行われるのを見ておりました。
一言も発せられず、私には理解できぬ手による裁判は終わりました。
文書で私の前に罪状と刑罰が出されましたが、罪状の方はこの地特有のものであり、中々意味を汲めません。
刑罰は、拷問による更生とでもいいましょうか。
裁判は形式上のもので、既に判決は決まっていたのでしょう。私は現実感のない頭で、刑を受ける場まで運ばれました。
ここからが本題だと思って下さい。
拷問官は私の口めがけてやたらめったら小槌を打ち付けました。
どうやら歯を折りたいようですが、私の口と言わず、頬や目まで打ち付けています。
私は耐えかねて、早く歯を折ってくれと自ら口を開きました。
ようやく歯が全部折れた頃には、私の顔は頬骨が潰れていました。
それから、ああ、後でわかりましたが、これがこの地での更生なのでしょう。
そう、それから、やっとこを口の中にぐいと押し込まれ、舌を抜かれました。
これは先程より呆気なく終わりましたが、それ故に、これから声が出ないという喪失感は大きかったです。
そして焼けた鉄で止血がされました。
最後に、去勢が行われました。
陰茎と両の睾丸が動かないように、板に釘で打ち据えられ、
両毎、根本からノコギリで切られました。
父上様。この苦しみを伝えられないこと、残念に思います。